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昔から、「食い逃げ客」というのは、飲食業界に存在していますが、私の属するコンサルティング業界にも、この手のお客さんが現れます。 飲食業界における食い逃げは「無銭飲食」で、基本的に食べた分だけのお金がなくて、払えない人を指しますが、コンサルティング業界の「食い逃げ客」は、「お金はあるけれども、コンサルテーションの価値を理解せず、目に見えないナレッジに、金銭を払う意志のない潜在クライアント」を意味します。 時間チャージの鬼ともいえる「弁護士」は、潜在顧客に対して、最初のプロフェッショナルな相談を、イニシャルコンサルテーションとして、フリーで行います。この場合は、時間を限っており、顧客の抱える問題の核心に触れる回答は、もちろん提供しませんが、少なくとも自分がプロとして深度のあるナレッジを持つことを相手に伝えるべく、ある程度のアドバイスは与えます。 友人の弁護士によると、潜在顧客の中でも、このフリーのイニシャルコンサルテーションを大いに利用して、いくつもの弁護士事務所を、たずねまわって、いろんな角度から弁護士のフリー・アドバスを収集して、結果、どの弁護士とも有償の契約を結ばない人や企業もいると聞いています。確かに大手の弁護士事務所の時間フィーは高く、私も弁護士と話すときには、なるべく簡潔に要点だけを伝えようとして、いつのまにか早口になっていまい、砂時計の砂が落ちていく時間感覚の恐怖を味わいます。JaMの担当の弁護士は、誠実で話し好きで丁寧な好人物ですが、私たちのこの時間チャージへの恐れを知っているので、この話はチャージしないから大丈夫と先に断って、時候の挨拶やら近況アップデイトしてくれます(笑)。 コンサルティングワークも基本的には、弁護士と同様に時間チャージで成り立っています。JaMの場合は、クライアントが日本企業の場合が多く、この時間チャージシステムがなじみにくいのが現状です。特に日本の文化が「時間をかけて、じっくりと」という価値観を持っており、米国のビジネスパーソンがビジネスシーンで最も嫌う「Waste my time(自分の時間を無駄に使った)」という正反対の価値観とのハザマで、JaM自身が使う時間は、半端な時間ではありません。そして、残念なことに、その莫大な時間をチャージできないことが多く、思わず「弁護士だったら」と口走ることもしばしばあります。 ただ、これもうちのニッチなビジネスのポジショニングゆえなので、ある程度あきらめていますが、最近はイニシャルコンサルテーションをとっくに超過して、ほとんど無料でJaMのナレッジや情報を収集して、最後は突然連絡もないまま「食い逃げ状態」で、いなくなる企業も出てきています。メールやファイルなどの書面にしなくても、対面や電話で話したナレッジや情報は、日頃から多大な時間をかけて収集分析している、JaMの商品です。そうした目に見えない「intangible asset」で、ビジネスをしているのが、うちの生業です。その無形の商品を無償で得て、突然音信不通になる、こうした「食い逃げ客」に何度も会うと、Energizerとして有名な私も、Energy Vampireにあったように、エネルギーを吸い取られてしまいます。 日本出張の際にも、情報交換しましょうと言われて、企業とミーティングする機会が多くあります。ただし、ほとんどの場合は、私の「インスタント米国最新マーケティング情報セミナー状態」で、あまり相互の情報交換は行われません。もちろん将来のビジネス獲得のための投資として、割り切ってやっていますが、これも何度も続くと、だんだんヘタってきます。 情報やナレッジの重要性は、昨年亡くなった偉大なる社会学者のドラッカー教授が強く指摘しています。製造業的なメンタリティーから脱して、「intangible asset」、すなわち、人間そのものを、「Asset(資産)」として捉えて、ビジネスをする、このAttitude(姿勢や態度)が大切だと思います。 CGM Big Bangの時代です。「食い逃げ」ばかりしていると、あっという間にその企業のBad Mouth(悪口のWOM)が広がります。 「食べた分だけ、料金はきちんと払いましょう」
by hisamioh!
| 2006-08-24 08:15
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